『トンデモ超能力入門』
本城です。先月末頃に『トンデモ超能力入門』(楽工社)という本が新しく出たので紹介します。著者は皆神龍太郎さんと石川幹人さん。お二人ともASIOSに参加されている方で、本書では皆神さんが「懐疑論者」、石川さんが「超心理学者=超能力研究者」の立場で対談を行なっています。内容的には、いわゆる対談本ですね。
扱っているテーマは「超心理学」。わかりやすくいえば、超能力を科学的に研究する学問のことです(ただ一般的に否定派や懐疑派からは「非科学的」とか「トンデモ」とか思われていることも多い)。本書では、その超心理学の歴史や現状を、肯定、否定に偏ることなく、バランス良く伝えられています。そもそも懐疑論者と超心理学者が対談本を出すなんてことは、世界的にみてもほとんどありえないことなので、かなり画期的な本です。
ところで本書では、日本の学者や否定論者に対して超心理学についての知識が圧倒的に欠けていることを指摘していますが、これは否定論者に限ったことではなくて、私も含めた懐疑論者を自称する人のほとんどが当てはまるのではないかと思います。
私はASIOSで石川さんと交流を持つようになって様々な情報をご教示いただくまで、日本の懐疑本に書いてある批判は超心理学に対して非常に有効であると思っていました。しかし、そうとも限らなかったのです。はっきり言ってしまえば懐疑本に書いてある批判や情報は古すぎるんですね。
これは比較的最近出された本にも言えます。たとえば山本弘さんの『超能力番組を10倍楽しむ本』(楽工社・2007年)は超能力捜査については抜群に優れた内容だと思いますが、後半に書かれている超心理学についての批判は古すぎて優れたものだとは言えません。
また、皆神さんが担当された『新・トンデモ超常現象60の真相』(楽工社・2007年)のガンツフェルト実験の記事も、これだけを読むと懐疑派の主張が有利であるかのように思えますが、実際はその後に進展があり、必ずしも懐疑派の主張が有利ではなくなっています。しかし改訂版ではその点がフォローされておらず、結果としてこの記事も批判としては若干古くなってしまっているんですね。
ですから、日本では否定派や懐疑派が関わった本で、超心理学の現状をしっかり伝える本というのは、ほとんどなかったと言っていいと思います。その意味で本書は、懐疑派が関わりながら、超心理学の歴史や第一線の情報をバランス良く伝えることに成功していると言えます。
超心理学は「トンデモ」の一言で片付けられるほど単純でもなければ、嘲笑できるものでもありません。実際は本書でも述べられているとおり、個々の研究は本当にハイレベルなものもあります。
そういったことを考えると、本書のタイトルに「トンデモ」と付けてしまったのは、(実際には全然トンデモじゃないので)避けた方が良かったのではないかとは思います。注目してもらうためには仕方なかったのだと思いますが、個人的には何でもかんでも「トンデモ」と付けることには反対の立場なので、今後はこういったタイトルを付けなくても買って読んでいただけるような読者が増えることを期待したいところです。
なお最後は、より多くの方に興味を持ってもらうためにも目次を紹介させていただきます。本書をきっかけに超心理学の凄さ、問題点、今後の課題などを知っていただき、興味を持つ方や将来研究者を志す方が出てきてくれれば嬉しく思います。
まえがき 皆神龍太郎
プロローグ
第一章 超能力を研究している学問がある!?
1「超能力を科学する」ってどうするの?
2 自称「超能力者」はホンモノなの?
3「心理学」と「超心理学」の関係は?
4 超能力研究の実験方法PART1
【コラム】 石川先生のワンポイントレッスン(1)超能力が出るとき・消えるとき
5 超能力研究の実験方法PART2
6 超能力研究の実験方法PART3
【コラム】 石川先生のワンポイントレッスン(2)「念力」にもさまざまな種類がある
第二章 超能力研究の歩みを学ぶ
【マンガ】 ハイズビル事件
1 超能力研究の歴史 世界編PART1
2 超能力研究の歴史 世界編PART2
【コラム】 石川先生のワンポイントレッスン(3) ガンツフェルト論争とは?
【マンガ】 千里眼事件
3 超能力研究の歴史 日本編PART1
4 超能力研究の歴史 日本編PART2
第三章 現代の超能力研究を知る
1 超能力研究の現状は?
2 超心理学の問題点
3 なぜ超能力研究は認められないのか
あとがき 石川幹人
わしゃ、ディーン・ラディンはトンデモさんだと思うけどね。
結局、超心理学のやってることは
「超能力が実在するとしたら、その力はどれくらい弱いのか?」
ということを確かめてるだけ。
残念ながら、強力な超能力は実在せんでしょう。
検出感度が上がると、効果はどんどん小さくなる、
というのは、病的科学の特徴ですね。
そういう意味ではPKはほぼ絶望的。
ガンツフェルト実験についても、定量的な議論はまったくできない。
そもそも、
効果は極めて弱いが、統計的には極めて有意、
なんて主張は自己矛盾してるような気がする。
本当にそんなことに意味があるのか?
2000年以降のガンツフェルト実験については、
石川さんに総説紹介してもらったけど、あんまし感心しなかったなぁ。
結局、条件を絞って「この実験方法だと有意な結果が出やすい」みたいな話で、懐疑的にみると、いわゆるcherry picking(おいしいとこだけいただく)してるんじゃないか?という気がするね。
Skeptical InquirerのVol.34,No.1, Jan/Feb 2010にワイズマンの批判記事が載ってたでしょ?「Heads I win, tails you lose」てヤツ(すんません、まだ詳しく読んでません)
(最近、911陰謀論ばかりやってるので、あんま超能力関係は追っかけてませんが)
>ながぴいさん
まあ確かに、ラディンには同調できないですけどね。しかも、あの人が超心理学のトップであるという現状はどうにかしたほうがいいとも思います。
>残念ながら、強力な超能力は実在せんでしょう。
そこらへんは超心理学者側(全員ではないけど)とある程度コンセンサスが取れるんじゃないでしょうか。マクロPKを使える超能力者の実在は厳しそうですし、ESP系についても強力なものは期待していないように思います。
>結局、条件を絞って「この実験方法だと有意な結果が出やすい」みたいな話で、懐疑的にみると、いわゆるcherry picking(おいしいとこだけいただく)してるんじゃないか?という気がするね。
画像だけだったらOKでしたっけ。いくつか条件をつけなければ効果が出ないようでは、懐疑論者側は納得しづらいでしょうね。私も納得しているわけではないです。
ただ、『新・トンデモ超常現象60の真相』では、超心理学者側もガンツフェルトを失敗と見なしているかのような終わり方だったので、その後に進展があって、現在では超心理学者側はそのように考えていないということはフォローしておくべきだったと思います。(その上で本書のように懐疑的な意見も加えるなら、なおいいんですが)
>Skeptical InquirerのVol.34,No.1, Jan/Feb 2010にワイズマンの批判記事が載ってたでしょ?「Heads I win, tails you lose」てヤツ(すんません、まだ詳しく読んでません)
すみません。私もまだ読んでないです。
レイ・ハイマンは歳もあるのか最近あまり批判しているところをみないですが、ワイズマンは健在みたいですね。
「現実世界はどこまで確実なものなのか?」
という問いは本質的なものなので、これ自体を研究することには意味があると思います。
わしが見たところ、超心理学の研究結果はほぼnull resultで、驚くべきことに
「現実世界は予想以上に確固であり、人間の意志だけでは、ほんのちょっとでも物理法則を捻じ曲げたり、確率や未来が変わったりすることは、ほとんどない」
というものだと思います。
これ自体は非常に有意義な結論だと思います。
(世界が変わったように見える場合もあるが、その多くは単に人間のバイアスのせいであって、世界のせいではない)
まあ、ニューエイジ系の人たちは絶対にこの結論を認めないでしょうけど。
研究結果については、本書を読んだ人たちも自分なりに知識をつけて各自が考えられるのではないかと思います。
超心理学についてはほとんど知られてないというのが現状ですから。何か説明したり、意見を述べたりするにしても、対象について知られていないと話が始まらないですし。
このコメント欄での話も意味がよくわからないと思われているかもしれません。そういうことも考えると、本書でも述べられいるとおり、この本が地盤作りに一役買ってくれたらなと思います。
ながぴいさんの言うとおりで、個人的には、ワイズマンがSkeptical Inquirerに書いているあの論文が、ボクの言いたかったことをほぼ代弁してくれています。
しかしねぇ、日本じゃ誰もSkeptical Inquirerすらも読んでないんですよ。否定論者であってもね。
つまり、自分が否定する対象すら、ちゃんと勉強もしないで、ただ頭から否定しているわけです。相手をバカにするのなら、その相手からバカにされないくらいは勉強しようよ、といいたいわけです。
ながぴいさんも納得できなかったようなので、一回、石川先生を囲んで、みんなでお話しをちゃんと聞いたりしてもいいじゃないでしょうかねぇ?
>皆神龍太郎さん
ながぴいさんも含めて、石川さんからお話を聞いたことはあるんですが、超心理学の話を詳しく聞いたのはもう2年くらい前になるので、また改めて最新の情報も聞ける話し合いの場を設けてみるのもいいかもしれません。年度末は忙しいでしょうから4月以降に企画してみます。
「現実世界は予想以上に確固であり、人間の意志だけでは、ほんのちょっとでも物理法則を捻じ曲げたり、確率や未来が変わったりすることは、ほとんどない」
これが「ほとんどない」なのか、または「まったくない」なのか、という一線の攻防が「サイの戦場」だと追っています。
ですから、「マクロなPKや、強力なPSIなど検出したことすらないよ」という現代超心理学の結論は、巷で勝手に信じられている超能力を否定する素晴らしい材料を我々に提供してくれている、という意味でも超心理学には、とても期待しているわけなのです。
そこは巷の超能力者が一番勘違いしそうなところですね。「超心理学の研究結果は自分たちの能力を認めているんだ」って。実際は全然逆なんですが。
「ニセ科学を10倍楽しむ本」と
「トンデモ超能力入門」を合わせて買ってみました。
ちらっと読んでみました。
これって
「真綿で首を絞める」というヤツちゃうんか?と思いました。
もしかして、皆神さん、ドS?
デバンカーモードのときは基本的にそうらしいですよ(^^;)