チャールズ・フォート
本城です。
今回は超常現象を語る上で欠かせない存在であるチャールズ・フォートを紹介したいと思います。彼は超常現象研究のパイオニアで、オカルトが大好きであることを公言しながら彼の名前を知らない人がいたら、もぐりだと判断できるほど知名度、実績ともに抜きん出た存在です。
今では、ほとんど誰でも知っている「テレポーテーション」(teleportation/瞬間移動)という言葉の考案者でもあります。
よく「奇人・変人」を扱った本で紹介されたりしていますが、彼の場合、特殊なこの斯界で研究、調査を極めた点において偉人でもあったと思います。後にも先にもフォートを超える人は出てこないだろうと思えるほどです。
でも、日本では彼の本が翻訳されていないためか、海外に比べて知名度が低いんですよね……。そこで以下では少し詳しく彼の略歴を紹介したいと思います。
チャールズ・フォート(Charles Fort/1874年~1932年)
超常現象研究の先駆者。斯界の超有名人。「異端の祖」とも呼ばれる。19歳の時にヒッチハイクで世界一周の旅に出る。22歳の時に南アフリカでマラリアに感染。ニューヨークに戻り、看病してくれた幼なじみのイギリス人アンナと結婚。
以降は仕事を転々としながら小説を10冊、メモを2万5000枚書きためる。しかしそれに不満を感じると全部焼却処分。20代、30代の頃は薪がないと椅子の脚を薪代わりにしなければならないほどの極貧生活だった。31歳のとき、後にアメリカを代表する作家の一人となるセオドア・ドライサーと知り合い、意気投合。親友となる。
32歳からニューヨーク公立図書館に通い始める。朝から新聞や論文誌をめぐり、その中から常識では考えられないような奇妙な現象を記録している記事を一つ一つメモして集めていった。彼は図書館が閉まるまで記事の収集を続け、家に帰ってからはメモの整理。この頃はほとんど世捨て人状態。
41歳の時に『X』と『Y』と題する本(『X』は火星人、『Y』は北極南極の超古代文明の話)を出版社に持ち込むが真面目に取り上げられることはなく、結局この原稿も焼却処分。
1916年、42歳の時におじの遺産が入ることになり超常現象の研究に専念できるようになる。
1919年、45歳の時には『呪われたものの書』(The Book of the Damned)を出版。「呪われたもの」とは、科学的な一切のモデルに合わず、従来の説明を拒む種類の事実をいう。日本では国書刊行会から翻訳出版の予定があったが、計画は頓挫し出版されることはなかった。
46歳になると4万枚もあったメモを焼却。妻と共にロンドンへ半年移住。一時、ニューヨークへ帰ったあと、47歳の時に再びロンドンへ。それから8年間、大英博物館の近くで暮らしながら、博物館付属の図書館へ通い続けた。1923年に2冊目となる著書『新しき地』(New Lands)を出版。
著書の中での考え方は挑発的で、場合によっては意図的な自己矛盾も辞さない。子供時代の暴力的な父親の影響から権威に対して強い嫌悪感を持ち、科学に対しても強い敵対心を持っていたと言われることもある。しかし実際に嫌っていたのは一部の科学者の態度。以下は著書の中で繰り返し述べている彼の言葉。
「科学そのものは決して余の敵にあらず。余が敵対するのは科学者なるものの独断的な姿勢なり。さらには超常現象にかかわる人間を直ちに『インチキ』呼ばわりする彼らの態度である」
フォートの著書を読む限り、気難しい性格だと思われがちだが、実際に何度も会った人の話では、常に礼儀正しく、紳士的、無邪気で優しい性格だったという。
1929年、55歳のときニューヨークへ戻る。1931年には『見よ!』(Lo!)を出版。この頃から闘病生活が始まる。1932年に『野生の英知』(Wild Talents)を出版。その後に病状が悪化。ニューヨークの病院で亡くなる。死因はおそらく白血病。
超常現象ファンやSFファンに与えた影響は大きく、SF作家でオカルト研究家だったアーサー・C・クラーク、またロバート・A・ハインラインなどはフォートのファン。
フォートが亡くなる前年の1931年には「フォーティアン協会」が設立。機関誌『Doubt』(ダウト)が創刊された。しかしフォート自身は自らが権威となることを嫌って加入を拒否。この組織がスピリチュアリスト(心霊主義者)や狂信者を引き付けていることを批判した。1959年に発起人が亡くなったことにより解散。
1965年になるとアメリカのバージニア州に「国際フォーティアン協会」(INFO)が発足。イギリスのロンドンにも1973年に「フォーティアン・タイムズ」、2000年には「チャールズ・フォート協会」(CFI)が設立された。
こんなところです。フォートの名を世に知らしめたのは、略歴でも紹介している彼の研究をまとめた4冊の本でした。80年近く前に出版されながら、現在でも絶版されることなく世界各国で増刷されている超ロングセラーです。
この一連の著書の中でフォートは、世界中で報告される膨大な数の超常現象を紹介しています。彼の一番のお気に入りは空から魚や血の雨などが降ってくる怪雨現象。他にも月面に見える謎の発光現象、UMA、UFO、心霊、人体発火現象、神隠し、ポルターガイストなどなど。
今日有名な現象や事件も、元を辿っていくとフォートが発掘したものだった、なんてものがたくさんあります。
しかもオリジナルであるだけでなく、彼の紹介する事件はほとんど全部に出典が示されています。通常、オカルト本というのは何を参考にしたか情報源を書かないものが多く、酷いものだと自分で勝手に話を捏造するケースもあるのですが、フォートの場合は違うのですね。そこをいい加減にしたら信用されないことがわかっていたのだと思います。
またフォートは事件を紹介するだけでなく、それらの不思議を説明しようともしていました。中でも有名なのが「私は思う。我々すべては所有物だと」という言葉。彼は、「地球人=宇宙人の家畜説」など、奇抜なアイデアを次々に発表しています。
しかし、それらはあくまで現象のひとつの解釈に過ぎなかったようで、彼が自分の理論を本気で信じていたのかというと、実際はそうでもなかったといわれています。
なお、フォートの集めた超常現象の数々は、その内容の奇妙さから通常の超常現象とは分けて、「フォーティアン・フェノメナ」(Fortean Phenomena)と呼ばれ、日本では「奇現象」とも呼ばれています。
そしてフォートの意志を継ぎ、奇現象の収集や研究を好む人たちは「フォーティアン」(Fortean)と呼ばれるようになり、現在、世界中に存在しています。(基本スタンスは主に肯定派)
でも残念ながら、日本ではフォーティアンと呼べるような人は非常に少ないのが現状です。これからは肯定派にもフォートのことが知られるようになって少しでも増えてほしいと思います。
真にお恥ずかしいことに、知りませんでした。
しかし、すごい方なのですね。
特に、情報の収集と情報元を明らかにするフェアプレー精神等、見習いたいことばかりです。
『カッコイイ』と思うのは、科学者を嫌っても、科学を嫌いにならないところですね。
この二つを同列に扱った議論って、見ていてあんまり、いい気分にならないもので。
砥石さん、こんにちは。
フォートは海外と比べると日本での知名度はかなり低いので、知らなくても恥ずかしいことはないと思います。むしろこれを機会に知っていただければ嬉しいです。
>情報元を明らかにするフェアプレー精神
これは肯定、懐疑などスタンスに関係なくぜひ見習いたいところですね。
お久しぶりです。若島です。XとYの話ですが、リン・ピクネットの本ではYについて「北極」となっていますが、実際は「南極」(South Pole)です。
ワカシムさん、ご指摘ありがとうございました。
確かにピグネットの本では北極でしたが、他の文献だと南極になっていますね。
訂正しておきます。