FRINGE(フリンジ):アメリカ人は“超常”がお好き♪
秋月です。少し間が開きましたが三回目です。さて、何を書こうか迷ったのですが…私、前々から思っていたことがあるんです――それは「アメリカ人は“超常現象”が大大大好きですねー」ということです。
だってちょっと考えてみてください。アメリカ映画って、かなり超常量過多じゃないですか。UFO映画の金字塔『未知との遭遇』(77)の監督スティーブン・スピルバーグや、水晶ドクロやロズウェル事件をねじ込んだ『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』(08)の監督ジョージ・ルーカスなんて、アメリカの国民的映画監督です。
挙げればキリがありませんが、中でも一番露骨に「大大大好き」を感じさせるのは、アメリカ独立精神とUFO神話をマッシュアップしてしまった『インデペンデンス・デイ』(96)でしょう。ホワイトハウスで上映会まで開かれたらしいですし――そのメンタリティはどこか理解しがたく、そしてどこか泥臭い気も…。
でも映画はまだいいんです。特にハリウッド映画は世界配給を視野に入れているからでしょうか、広い価値観に対応できるよう“薄められている”気がするんです。
その点ドラマは濃いんですよね、ターゲットはとりあえず国内ですから。まず超常現象を扱ったドラマ(以下、超常ドラマ)で最も有名なのは『X-FILES』(93-)でしょう。シーズン9まで続き、なんと全201話。これ以前にも超常ドラマはありましたが、このX-FILESが以後、途切れることなく続く超常ドラマの強固な流れを作ったことは間違いありません。
X-FILESに近いモノだと、そのUFO版であり、後のテイクンの原型とも言える『ダークスカイ』(96-)。UFOドラマなのに、まるで大河ドラマのように語るスピルバーグ制作総指揮の『テイクン』(02)。一人や二人じゃない、4400人もの人がアブダクトされちゃう巨匠映画監督フランシス・F・コッポラ制作総指揮の『4400 未知からの生還』(04)。最近映画にも進出しているJ・J・エイブラムスの『LOST』(04)にも超常テイストがてんこ盛りでした。
まだまだあるな。『スーパーナチュラル』(05)。『ミディアム 霊能者アリソン・デュボア』(05)。『HEROS』なんかもそうか…。これまた挙げればキリがありません。私もこの手のドラマが好きなので気にしてはいるのですが、全部見てたら人生毟り取られてしまいそうです。
FRINGE / フリンジ 〈ファースト・シーズン〉Vol.1 [DVD]
- 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
- メディア: DVD
[公式サイト]http://wwws.warnerbros.co.jp/fringe-dvd/
さて、そんなアメリカ産超常ドラマに新しい仲間が加わりました。J・J・エイブラムスの『FRINGE(フリンジ)』です。このドラマ、レンタルDVDで一話から五話まで観賞してみたのですが、もうウンザリするくらいマニアックな超常ネタの連発で、おもわずニヤニヤ――いろいろ語りたいところではありますが、各話に登場する超常アイテムを簡単にご紹介するにとどめましょう。
内容と照らしあわせての解説はしないので、もし、このエントリーで興味を持たれて、このドラマを見る人がいたとしたら、ああ、なるほどコレのことね、とほくそ笑んでください。
▼第一話:フライト627(PILOT)
【超常アイテム】アイソレーションタンク
アイソレーションタンクとは、感覚遮断によって幻覚を誘発する装置で、仕組みは簡単、人間が中に入り、外界からの刺激(視覚や聴覚)を遮断することができる、食塩水が溜まったタンクです。この装置を開発し研究したのは、イルカの研究で有名な脳科学者ジョン・C・リリー博士。彼は実際、この装置によって得られる幻覚体験により、この世にある別世界を夢想しつづけました。60年代、ベトナム戦争の混沌とした状況などにより閉塞的状況にあったアメリカ国内では、主流思想に対峙するカウンターカルチャーとして、この手のものが若者の間に広く受け入れられていたんですよね。
ドラマ『フリンジ』の”胆”はウォルター・ビショップという名の博士で、彼はリリー博士と、やはり同じように幻覚世界の存在を主張したティモシー・リアリーを足して二で割ったような、なかなか味わいのあるマッド・サイエンティストです。このあたりを、今わざわざ持ってくる背景には、懐古主義みたいのがあるのかなあ。
▼第二話:80歳の赤ん坊(THE SAME OLD STORY)
【超常アイテム】最期網膜残像
これは知っている人少ないと思うんですが、「最期網膜残像(この名称が正しいのかもわからない)」ってのは、人間は最期の瞬間に目に映った映像が、網膜に焼き付いているという、かなり昔に流行った俗説のこと。もちろん、そんなことあるわけがないのですが、当時はかなり信じられていて、殺人事件の犯人捜査に応用できないかとか、けっこう真剣に研究されていたみたいです。この件については、私もうろ覚えで書いてる状態なので、よくご存じの方がいらっしゃいましたら教えてください。
▼第三話:預言する男(THE GHOST NETWORK)
【超常アイテム】ラジオ人間
「ラジオ人間」とは、ラジオがなくても「ラジオ電波」を受信してしまう人間のこと。これも80年代ごろの『世界の謎と不思議』みたいな本には必ずあるネタでしたね。実際こんなことが本当にあるのかは、よくわかならいのですが。現代ではいろんな電波が飛び交っているので、かなりややこしいことになりそうです。どうもこのような話の背景には、科学やテクノロジーの急速な発展と、それをただ受け入れることしかできない人々との間にあるズレがあるような気がします。
▼第四話:監視人(THE ARRIVAL)
【超常アイテム】MIB
ご存じMIB(メン・イン・ブラック)くん登場で私はふんぞり返りました。同名映画に登場するようなステレオタイプな偽物じゃありません。マニア泣かせのスキンヘッド、眉毛なし、食べ方が変、という1976年ハーバード・ホプキンス事件仕様です!
▼第五話:潜在能力(POWER HUNGRY)
【超常アイテム】街灯干渉
超常現象に強い興味持っている人にしかわからない感覚だと思いますが、たった5話目に、この「街灯干渉(SLI/Street Lamp Interference)」をもってくるのは、かなり渋いです。いつか出てくるだろうとは思ってましたが、もっとネタが尽きた頃だろうと思ってました。
どうやら街灯の下を通ると街灯が消えちゃうという人がいるらしく、そんな現象のことが街灯干渉とよばれています。UFO言説におけるEM効果、超常現象界隈に付きものである電気機器の異常の多発なんかと、基本的には同じ。
秋月さん、こんばんは!
本当にそうですね!僕の年代ですと「アウターリミッツ」、「インベーダー」
なんかが特に印象に残っています。
きっと「奇蹟」をベースにしている「キリスト教」の教えが、現在もアメリカの
人たちに広く深く根付いている事も一つの理由なんでしょうね。
その点「仏教」や「神道」は、きっと(幸いにも??)今の日本人には
そこまで広く深く染み込んでいないんですね。
日本の仏教に奇跡がないですと?
全国を温泉の里にした?弘法太子に誤れ!弟子であの程度だと、お釈迦様になるとどのくらいの奇跡が起こせるかわかったもんじゃありません。
まあ、日本もオカルトはアメリカに負けず劣らずだと思いますが。
お代官様、はじめまして! 頭文字Dです。
「日本の仏教に奇蹟がない」、という意味で書いたつもりはないのですが・・。
「宗教」には「奇蹟」がつき物だと言う事は承知しております。
もう一度お読みくだされば分かると思いますが、現在の日本人には
仏教や神道を「宗教的」なものとして捉えている人が多いが、アメリカ人には
「キリスト教」を「宗教的」というより「倫理、道徳的」なものとして感じている
人が今も多いのでは?、という意味でコメントさせて頂きました。
誤解を招くコメントだったようですので、訂正させて頂きます。
最期網膜残像ですが、「ブラックジャック」の13巻の第116話「春一番」で扱われています。
殺人事件の被害者から角膜提供された少女が犯人の残像を見るようになって、まさか殺人犯だとは気付かずに、その残像の人物に恋してしまう話です。
家にあるマンガですが、中には「お待たせしました!最新刊」の帯の付いたものまであるので、ある意味すごいかもしれません。
ブラックジャックのネタを書こうとしたら既に書かれてたっ! 無念っ。
あと、お代官さんのコメントは本気でお怒りになってのものでは
ないと思いますよ。だって「弘法太子に誤れ!」ですもの(違)
ラジオ人間と街灯干渉に関しては、電磁波(電波)を入力(受信)
してるか出力(周囲の電気機器が誤動作)してるかの違いで、
本質的には似たようなもの、って話もありますね。
関係ないですが、コンピュータ絡みの仕事してる人間ですら
「誰々がいる(あるいは操作する)とパソコンの調子が悪い」
などの話は出てきますね。街灯干渉とはたぶん違いますが(笑)
お代官さま、紗崎さま、管理人さま、その他のみなさま!
この度は全く洒落の分からない、恥ずかしいコメントを
してブログの雰囲気を壊してしまい、
本当にすみませんでした。m(__)m
人並みにジョークの分かる人間になるため、思い切って
出家をして仏教の修行をしてまいる所存でございます。
お釈迦さま、お代官さま、弘法大師さま、どうぞお許しを!
まあまあ( ̄▽ ̄;
佛道やってるけど超常的な意味での奇跡なんか何ひとつとして教わりませんよ。たとえば道元禪師などは超常について、まったく条件しだい(つまり再現可能性や普遍性もたない)チンケな代もんだとする、じつに冷静な評価くだしてますし。
オカルトよりも人と人のいる世界こそ神秘だと示す点で13世紀の道元禪師と20世紀のカール・セーガン博士は等価だと感じます。
そういえばアイソレーションタンクですが坐禪してても軽微な感覚遮斷によって軽微な幻覚とか感覚異常おきること、あるです。それを神秘体験だの「私は悟りを得た」風にとらえる困ったチャンが禪やってる中にも、います。やれやれ。
私もブラックジャックのネタをY・Yさんに先こされちゃったです。そういえば心霊手術も作中に登場してましたね、あれ。
>頭文字Dさん
全然気にされる必要はないですよ。特に問題があるとは思いません。これからも気になさらずコメントください。
いつのまにか、こんなコメントが。
皆さんありがとうございます。勉強になります。
皆さんのコメントを読んでも思うのですが、このエントリーは軽めな内容ですが、割と本質的な問題を含んでいるような気がします。
タイミングよいことに、こんなムック本が発売されたみたいですねー
ASIOSの山本弘さんも寄稿されています。
『怪奇・怨霊・宇宙人 衝撃!超常現象映画の世界』
http://www.amazon.co.jp/dp/4862485359