科学の理解度判定問題(回答編)
こんにちは。蒲田です。
前回は「科学の理解度判定問題」として5つの問題を出してみました。実は、この問題を作るときに参考にしたものがあるんです。知っている方は知っていると思いますが、私は、超常現象信奉者と色々な議論をしてきました。その実体験の中から、超常現象信奉者が陥りやすいと思った、科学に関する誤解を参考にしたのでした。
ありがたいことに、いくつかトラックバックを頂きました。考えを深めるために役立つと思うので、是非トラックバックをつけて下さったブログも訪問してみてください。
みなさんの答えを見てみると、やっぱり問題文自体に配慮が足りていないようで、色々と意見が出たようでした。私は出題者として、問題文の意図を全て理解しているので、その立場(特権的立場 笑)から回答を書きます。
ただ、模範解答としてではなく、回答の一例として、みなさんの回答と同じように捉えてください。
ひとつひとつの設問だけでどこまでも深入りできそうなので、細かい説明は省いています。そのため、この手の話題に詳しくないと分かりにくいものになっているかもしれません(今のところこの手の話題に詳しくない人はあまり訪問していただけてないような…)。
【問1】新しい理論は科学を発展させるから、新たな主張にはあまり厳しい批判をせず大事に扱うべきである。
回答:b
ポイント:批判は仮説の蓋然性を上げるために重要かつ役に立つ
理由:科学では提唱された仮説への批判によって理論が洗練されるという過程をとる。厳しい批判によって、理論が妥当でないという結論が得られたり、理論がより洗練されたものになる(不明点や不十分な点、矛盾や間違いが明らかになる)。
たとえ、批判によって新理論がつぶれたとしても、それは科学の発展と言える。なぜならば、それはひとつの理論が正しくないと分かったということであり、つまりは自然の理解に一歩近づいたということだからだ。科学の進歩とは新たな理論を成立させることではなく、より妥当な結論を知ることである。
事実に基づく根拠のある批判は科学の進歩にとって、とても重要である。
【問2】これからも絶対に間違いが見つからないように注意して作られた理論は、当然正しい理論である。
回答:b
ポイント:反証可能性の概念
理由:その理論が絶対に間違いを見つけられないような理論ならば、それは「世界五分前仮説」のように反証不可能な理論である。反証不可能な理論は間違いを見つけられない代わりに、正しいことも証明できない。よって科学では門前払いされる理論である。
逆に科学的な理論は常に「新たに判明した事実」によって反証される(不十分な点や間違いが明らかになる)可能性を持っている。人間は全知にはなれないのだから、理論を作った時点で全ての事実を知っているわけではない。そのため、こういった不完全さは本来なら絶対に避けられない限界である。
【問3】新しく立てた理論について、その理論で説明できるという例を沢山見つければ、その理論の正しさはどんどん確実になっていく。
回答:b
ポイント:理論のもたらす説明の豊かさと蓋然性は独立している
理由:理論が正しいとする肯定的根拠をあげただけでは、ダメである。なぜならば確証バイアスに陥っているかもしれないからだ。科学の新理論は新理論に対する合理的な批判を解決すること(間違っている可能性をつぶすこと)によって完成する。
理論の正しさという切り口の場合、その理論によってどれくらいのことを説明できるかは重要ではない。UFO宇宙人仮説のように様々な謎を説明できる仮説も、説明できること自体では蓋然性(もっともらしさ)を上げることはない。
逆にどんなに色々なことを説明できる理論であっても、決定的な矛盾がひとつ存在するだけで、正しくないことが判明する。
【問4】”「白いカラスが存在する」という主張と「白いカラスは存在しない」という主張は対等なのだから、双方が証拠を持ち寄って議論すべきだ。”という考えは科学的である。
回答:b
ポイント:検証と反証の非対称性、悪魔の証明
理由:ないということの証明は不可能である。つまり「白いカラスは存在しない」という主張を証明する事はできない。そのため、科学では基本的な仮説として「存在しない」という立場をとることを良しとする。
逆に「白いカラスが存在する」という主張は実例を提示することで証明可能である。証明可能な主張と証明不可能な主張は対等ではない。第一段階として白いカラスが存在するという側が証拠を提出すべきである。
【問5】科学において間違った理論が主流になっていた事が多々ある。これは科学の”失敗した例”である。
回答:b
ポイント:理論の塗り替えは例外ではなくごくごく普通の道
理由:科学における理論とは、常に反駁される可能性を持っているのが正常である(問2の答えも参照のこと)。新しい事実の発見によってこれまで成り立っていた理論では説明がつかなくなる可能性は常に存在する。但し、これまでの観測結果とは矛盾しない範囲内であることにも注意。
科学において理論が塗り替えられるのは、科学のエラー修正機能が正常に働いている証拠であって失敗の例ではない。逆に科学の進歩とは、理論の塗り替えを繰り返すこととも言える。