年末特番でのロズウェル事件の扱い

こんにちは。蒲田です。

ブログを更新し損ねたので、ちょっと遅れてしまいましたが年末特番の話です。

アポロ月着陸捏造論を支持しちゃうという大槻名誉教授のダメさが存分に出た『ビートたけしの禁断のスクープ大暴露!!超常現象(秘)Xファイル!! 』でしたが、超常現象好きからすると、全体的に残念な内容でしたね。

いつものことといえば、いつものことです。ところで、エドガー・ミッチェルが出てくるパートで、専門分野の「ロズウェル事件」の話が出ていたので、ツッコミを入れてみました。

もしかしたら、ロズウェル事件のことを全く知らないひともいるかもしれないので、最初に簡単にまとめておきます。

1947年7月、軍から空飛ぶ円盤を回収したという公式プレスリリースが出されました。その後、ニュースは分単位でアメリカ中に話題が広がっていき、さらには海外からも注目されました。しかし、その日の夕方にはラジオ放送で空飛ぶ円盤という情報が気象観測用気球だと訂正されました。数日後までフィーバーの影響は残りましたが1947年の話はこれで終わりです。

ロズウェル事件はそれから30年以上忘れられていたのですが、1978年頃に発掘されます。ここになって初めてUFOの残骸を見たとか宇宙人の死体を見たとかいう話が出てきます。証言者も増え、盛り上がりはだんだん加速していき、1990年代には最も有名なUFO事件という状態になりました。

1990年代後半は、UFO関係ならなんでもかんでもロズウェル事件にからめて話されるようになりました。

では、番組でのロズウェル事件の扱いを見てみましょう。

ロズウェルの山中に墜落したUFOを軍が回収し、プレスリリースを行った

「コロナ近くの牧場に墜落したUFOを軍が回収し、プレスリリースを行った。」というのが正しいです。「ロズウェル事件」ですし、ロズウェルと紹介したのはまあまあしょうがないかも。でも、山中というのがいまいち分かりません。1980年代以降の証言者には墜落円盤が崖に突き刺さっていたという主張をしてる人もいたので、その話なのかもしれません。

ちなみに、再現ビデオは雑木林のようなところを移動している軍人のシーンでしたが、UFOが突き刺さったという崖のところはゴツゴツした岩山です。もしかしたら、ロシア版UFO墜落事件(もちろんフェイク:レッドロズウェルとか呼ばれてるらしい)のビデオで、森の脇に墜落したUFOを回収しているシーンがあるので、そのイメージが少し影響しているのかもしれません。もちろん、あくまで憶測ですけどね。

すぐに軍はプレスリリースを訂正。回収したのはモーグル気球で宇宙人と報告されたのはパラシュート実験用の人形ということだった。

「すぐに軍はプレスリリースを訂正。回収したのは気象観測用気球ということだった。」というまとめが適切だと思います。きちんと追うと、数日後の新聞では気象観測用気球ではなくレーダー追尾訓練用気球ではないかとされていることが分かりますが、ここら辺はマニアの領域ですね。事件が起こった1947年の時点ではここまでで話が終わっています。

モーグル気球の話が出てきたのは比較的最近の話で、ロズウェル事件に関する米空軍の報告書第一弾『ロズウェルレポート』(1994年)が出てから定説になったものです。番組でこの話のときに流されていた映像はポリエチレン製の大型気球のものでしたが、墜落したのは小型ネオプレン製気球を複数つなげたバルーントレインと呼ばれるものなので、見た目はだいぶ違います。

まあ、モーグル計画の映像というと、ポリエチレン製気球の方が良く出てくるのでしょうがないかもしれませんけど。

パラシュート実験用の人形は、米空軍の報告書第二弾『ロズウェルレポート ケースクローズド』(1997年)の話になります。そもそも、1947年の時点では宇宙人の死体の話なんか誰もしていませんでしたから(もっというと、UFOが宇宙人の乗り物だと考えている人もあまりいなかった)、当時の軍が話題にするはずがありません。

それは1994年の空軍レポートも同じで、本来のロズウェル事件の調査として宇宙人の死体の話を扱う必要性を感じなかったようで、宇宙人の死体は扱われなかったわけです。

1997年のレポートは、1994年のレポートで宇宙人の死体に関する証言を扱っていなかったため、「説明が足りない。説明しろ。」という政治的圧力に答えて出てきたものです。そんな背景のため、信憑性の無いものに合理的な説明をつけようとしており、説明には結構無理があります。

おそらく空軍の調査官も、それほど本気でパラシュート実験用の人形だという結論を出したわけではないと思います(報告書の建前上は「これではっきりと説明できた」という体裁ですけど)。

エドガー・ミッチェルが月から帰ってきたとき、ロズウェル事件の目撃者から話を聞いた

1947 年の一時的な盛り上がり以降でロズウェル事件の話が出てきたのは1970年代後半のことです。それまで、目撃者は出てきたことがありません。ミッチェルの月旅行は1971年なので、ミッチェルが1970年代前半あたりでロズウェル事件の話を聞いたということなら、信憑性はかなり薄いといわざるをえません。

墜落UFOからのリバースエンジニアリングによって、新たな技術がもたらされた

光ファイバー、LSI、ステルスなんかが、UFOの技術をリバースエンジニアリングした結果だという話をよく聞きます。フィリップ・コーソーの話(『ペンタゴンの陰謀』)が有名ですが、殆ど妄想としかいいようがないものです。噂に聞くところによると、コーソーは孫娘にプレゼントを買いたいから本を書いたという話もあるようです。

全体的にロズウェル事件ビリーバーの本よりおかしなまとめになっていたといってもいいかもしれませんね。

(ロズウェル事件と関係なし)2008年4月11日にテキサス州に現れたアダムスキー型のUFO

動画が出ていましたが、アダムスキー型には似ても似つかないんですけど…。

年末特番でのロズウェル事件の扱い”へ2件のコメント

  1. 砥石 より:

    この番組、見なかったのですが、興味深い内容ですね~。
    大槻教授、アポロ疑惑を支持しちゃったんですか!!。
    皆神龍太郎さんも、UFO学入門で書いていたと思うのですが、大槻さんは取り組み方はともかく、科学の味方だと思っていたのにショックです。
    後、ロズウェル事件のまとめついて。
    よく纏まってあるので、解りやすくて良いですね。

  2. 蒲田 より:

    > 砥石さん
     こんにちは。
     大槻教授はタレント化しすぎたためか、超常現象否定のコメントでもおかしなことを言うことがあるので、気をつけてくださいね。
     Japan Skepticsにも戻ったらしいのですが、そのことで懐疑論者が誤解されそうで嫌な感じです。

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