心霊写真の調査
調査・執筆:横山雅司、本城達也
調査協力:若島利和、蒲田典弘、他モデル
「心霊写真」とされるものを調査し、その結果を下記にまとめました。これらは全体のほんの一部ですが、よく報告されるパターンごとにわけ、その仕組みを解説していきます。
- オーブが写っている心霊写真
- 体が透けている心霊写真
- ケース・スタディ:頭が透けている写真
- ケース・スタディ:手が透けている写真
- ケース・スタディ:手がおかしな写真
- ケース・スタディ:腕が消えている写真
- ケース・スタディ:足が消えている写真
- ケース・スタディ:白いモヤの写真
- ケース・スタディ:謎の光の輪が写った写真
- ケース・スタディ:奇妙な光の棒が写っている写真
- 心霊写真の多くは偶然撮られた失敗写真
オーブが写っている心霊写真
下の写真のような球体は、一般に「オーブ」と呼ばれています。心霊写真の中では最も撮られやすいものです。
霊能力があるという人の鑑定では、魂や何らかの霊体が写り込んだものだといいます。
本当でしょうか?
実際に写真を撮って検証してみました。するとオーブの正体は、「小さな光源がピンボケしたもの」だということがわかります。
ここでいう「小さな光源」とは、多くの場合、空気中をただようホコリ。これにカメラのフラッシュなどの強い光が当たって反射すると、小さな光源になるのです。
しかし小さな光源だけでしたら、それはただの小さな光として写ります。
それがオーブのようにある程度の大きさがあって、少し透明感のある球体として写るには、もうひとつポイントがあります。
それが「ピンぼけ」です。
普段、私たちが写真を撮るとき、カメラのピントは自動で撮りたい人物や対象物に合う場合が多いですね。この場合、ピントが合う範囲にあるものはハッキリ写ります。
けれども、その範囲からはずれた場合はピントが合いません。すると、たとえば小さな光源がカメラの手前(それこそレンズの直前)にあれば、ピンぼけ状態で写ることになります。
それがオーブの正体です。下の連続写真をご覧ください。
これは鏡に映ったものに対してピントを合わせた状態で、その鏡にホコリをつけて撮影したものです。ホコリがカメラに近づくとどうなるか見てましょう。
見てのとおり、鏡本体がレンズに近づくほど、表面のホコリがピンぼけしてオーブ状に写っていくことがわかります。
もちろん、こうしたホコリは通常、空気中をだたよっているものです。そのため、それらを動画で撮影してもオーブとして映ります。
下の動画は実際にホコリを撮影したものです。上、下、横と、いろいろな動きを見せることがわかります。
次の動画では、始まってすぐ、ホコリのオーブが右に動いて消えたかと思うと、今度は下の方で左に向かって動くものが現れます。
なお、ここではわかりやすくホコリを例にしましたが、「ピンぼけした小さな光源」になるものは他にもあります。
たとえば「雨粒」、「レンズに付着した小さな水滴」、「手前にピントを合わせたときの遠くの照明」など。
このように、ひとくちに「オーブ」といっても、その原因は様々。
連続で撮影した場合は、複数の原因によって数枚の写真にオーブが写ることもあります。また逆に、連続で撮影したうちの一枚しかオーブが写らないこともあります。
ホコリをはじめ、オーブの原因となりうるものは、空気中を静止しているわけではなく、常に動いていることが多いです。
そのため連続写真であっても、ピンぼけする範囲からはずれてしまったり、光を反射しない動きをしているときはオーブ状に写らない場合があります。
オーブは見た目が単純でも、その仕組みはなかなか奥が深いものです。
体が透けている心霊写真
体が透ける心霊写真の場合は、霊能力があるという人の鑑定によれば、原因は何らかの警告を含んだ霊障の可能性が考えられるといいます。
ところがこれらは実際に撮影してみると、「シャッタースピードが遅い状況で被写体が動いた」ことが原因だとわかります。
こういった写真は、夕暮れ時や夜、日影、またはやや暗めの室内などで撮れやすいです。
暗めの場所では、カメラは多くの光を取り込もうとしてシャッターを長く開けます。(これを「シャッタースピードが遅い」という)
シャッターが長く開いているということは、それだけ撮影時間が長くなるということ。
この長くなってしまった時間内に、撮影しようとした人物がうっかり動いてしまったらどう写るでしょうか?
最初に人物が静止している間の姿は動かないのではっきり写ります。しかし動き出したあとは、そこに背景が写ります。
すると同じ場所に「人物」と「背景」が重なり、人物が透明になったように写ってしまうのです。(動いている途中の姿は、ゆっくりであれば「ブレ」として写り、比較的早ければほとんど写りません)
これは体の一部の動き、たとえば腕や足、頭などでも起こる現象です。ポーズをとっていた人物が撮影のときにうっかり動いてしまったりすると、手足や頭などが透明に写ることがあります。
ケース・スタディ:頭が透けている写真
ここからは個別の事例を検証していきましょう。まずは頭が透けている写真。
このような透明化は先に述べた仕組みが原因で撮れます。とくにこの事例の場合は、背景に明るい照明があるため、より透けやすくなっています(背景が明るいと、その背景はハッキリ写りやすい)。
なお、人物が白っぽく写っているのはカメラのフラッシュの反射が原因です。
これらを考えて実際に再現した写真がこちらです。
ケース・スタディ:手が透けている写真
これも仕組みは同じ。シャッタースピードが少し長めの状態で、撮影時に手を動かしてしまったことが透明化の原因だと考えられます。
ケース・スタディ:手がおかしな写真
これは透明化せず、ただブレて写っているだけの写真です。振り向きざまに手を振ったところを撮影されたために、このようにブレてしまったと考えられます。
カメラの設定や、撮影のタイミングと被写体が動くタイミングによっては、透明になるよりブレることも多いです。
ケース・スタディ:腕が消えている写真
このタイプは、撮影時の自然な行為として腕を体の後ろに回すなどした結果、腕が体や服に隠れて見えなくなってしまったと考えられます。
下の写真は、まさにそれです。
こちらは再現写真。
半袖の方が袖口が広く、消えたように見えやすいです。ただし長袖でも角度によっては、まるで腕が切り取られたかのように見えることもあります。
ケース・スタディ:足が消えている写真
このタイプは女性を被写体にしている場合が多いです。なぜかといえば、スカートをはいていて足が隠れやすいからです。
また、撮影時にモデルのようにポーズをとるなどして両足が重なってしまい、あたかも足が一本消えたように見えてしまうこともあります。(男性の場合はハーフパンツが多い)
上の写真は両足が重なるようなポーズをとったことが、一本足に見える原因だと考えられます。
下の写真はそのポーズを実際にとって再現したもの。
続いて、足が消える別の例。
これは下のイラストのように男の子が足を開いて立っているため、下半身が消えたように見えてしまったと考えられます。
ケース・スタディ:白いモヤの写真
白いモヤは、霊体(エクトプラズムなど)のようなものが写ったとされることが多いです。
しかし、その正体はいくつか考えられます。
たとえば下の写真の場合、雪が見えることから、撮影現場はかなり寒かったことがわかります。すると白いモヤの正体は、撮影者がはいた息の可能性が高いです。
下の写真は実際に撮影者の息を撮影したもの。
続いては宴会場のような場所で撮られた写真。料理の湯気が白く写った可能性もありますが、タバコの煙が写った可能性も考えられます。
ここではタバコの煙の可能性を考え、どのように写るか下の写真で示しました。
続いては駐車場で撮られた写真。雪が写っているため、撮影者の息が白く写った可能性があります。
ただし撮影現場は駐車場。寒い状況では車の排気ガスも白く写ることがあります。
そこで下の写真では、実際に車の排気ガスを撮影しました。
以上の写真は、それぞれ撮影状況によっても質感は異なってきますが、実は肉眼で見えるよりも白く写っています。
とくに自身の息の場合、暗い場所では見えにくい上に、コンパクトカメラは暗いと判断すれば自動的にフラッシュをつける機種が多いため、気がつかないうちにフラッシュに反射した白いモヤの写真を撮影してしまうことがあります。
息や車の排気ガスは、フラッシュがない状態ではデジタルカメラの液晶画面でもほとんど見えません。
なお息が白く見えるためには、一般に湿度100%で気温17度以下という条件が必要です。これより低い湿度だと、だいたい気温14度くらいから息は白くなります。
もし屋外などで白いモヤが写った場合は、こういった気象条件も調べてみましょう。
ケース・スタディ:謎の光の輪が写った写真
下の写真に写っている光の輪のようなものの正体は、カメラにつけるストラップなどだと考えられます。
下の写真は実際に再現してみたもの。
ストラップが白いと、光を反射してこのように白く光って写ることがあります。
また白色以外の場合は、下の写真のように中央部分が光で白く飛び、周囲は元の色が写ります。
下は再現写真。
ちなみに、ストラップがほつれて糸が写り込んだ場合は下のようになります。
一眼レフではない通常のフィルムカメラの場合、レンズとファインダーはつながっていないことが多いです。そのためレンズ前に何かモノがさえぎっていても現像するまで普通は気づきません。
それが、とくに昔はこういった写真がよく撮られた原因だと考えられます。
ケース・スタディ:奇妙な光の棒が写っている写真
最後は奇妙な光の棒が写っている写真。投稿者によれば、下の写真は幼児の頃に撮られたもので、右手には石を持っていたはずなのに、大きな木切れが写っていて不思議に思ったそうです。
写真をよく見ると、周囲には葉っぱや枝が落ちています。そこから正体として考えられるのは、フラッシュを反射した落下中の葉っぱか小枝。
実物は見た目ほど大きくなく、葉っぱか小枝が撮影中にたまたまカメラの前を落下していったのだと考えられます。
光っているのは、カメラのすぐ近くを落下してフラッシュを反射したからです。
下に示したのは再現写真。
フラッシュを反射すると、このようにまるで発光しているかのように写ることがわかります。
心霊写真の多くは偶然撮られた失敗写真
最後に、ここまでご覧になられた方はお気づきでしょうか。
実は心霊写真といわれるものの中で、悪意や作為によるフェイク写真というのはそれほど多くありません。最も多いのは撮影者が意図しない失敗写真。
つまり心霊写真というのは、基本的に「偶然撮られた失敗写真」ともいえます。
こういった失敗は、カメラの仕組みを知ることや、様々なケース・スタディを知ることなどで減らすことができます。
もし奇妙な写真を撮ってしまっても、すぐに心霊写真だと怖がる必要はありません。
冷静に原因を考えてみましょう。霊の仕業と考えるよりも、ひと味違った面白い発見があるかもしれません。