ジョー・パワーの検証

本城です。

久しぶりに超能力捜査のスペシャル番組が放送されます。

▼4月21日(月) 19:00~20:54 テレビ朝日
「トリハダ[秘]スクープ映像100科ジテン」
信じるか?信じないか?トリハダ!世界の超能力捜査2時間スペシャル! 新聞記者、現職警官、被害者本人、現地取材で超能力捜査の目撃者に直撃取材! 超能力者は、何を解き明かしたというのか?スタジオでは超能力肯定派、否定派が激論!(番組サイトより)

この番組では、ここ最近、何度か超能力捜査を取り上げていましたが、今回はついに2時間スペシャルになるようです。さて注目は、イギリスNo.1サイキックとも言われるジョー・パワーでしょう。実は彼、イギリスの番組でマジシャンのダレン・ブラウンと対決し、一度、トリックをバラされています。

ところが人気は一時急落したものの、根強い支持者に支えられて、いまだに人気はけっこうあるそうです。

そんなジョーですが、今回の番組で取り上げられる二つの事件は、本人もよく宣伝している鉄板の事件です。シャノン・マシューズ誘拐事件は2009年にTBSの「キミハ・ブレイク」でも取り上げられ、リンゼイ・クワイ失踪事件もディスカバリー・チャンネルで取り上げられたことがあります。

しかし残念なことに、これらの番組では懐疑的な調査が行われておらず、ジョーのストーリーをそのまま信用するだけでした。おそらく今回の番組も似たようなものだと思います。

そこで、ここでは、番組で紹介されないであろう情報を少し紹介しておきたいと思います。

まずはシャノン・マシューズ誘拐事件。これは2008年2月19日に、イギリスのデューズバリーという町で起きました。この町に住む当時9歳のシャノン・マシューズという少女が誘拐されたのです。(当時、イギリスで大変話題になった事件)

基本的な概要については、番組のサイトにも書いてありますね。すぐに消えてしまうため、引用しておきます。

【9歳少女監禁事件!事件のウラに超能力捜査が!?】
2008年、イギリス。シャノン・マシューズちゃん9歳が誘拐された!
母カレンは涙ながらに娘が帰ってくるようメディアに呼びかけた。
だが、約1000万円の懸賞金をかけた全力の捜査もシャノンちゃんの行方はわからない・・・
そこである雑誌記者が超能力者ジョー・パワーに透視を頼む。
彼が発した「バトレイ」「マイケル」「ポール」という3つの言葉。
果たしてこの3つの言葉は何を意味するのか?シャノンちゃんの安否は?
そして事件は意外すぎる結末を迎える・・・!
【21歳美人妻が失踪?事件のウラに超能力者の夢が!?】
1999年、2人の子供を持つ21歳の母、リンジーが行方不明に。
同じころ超能力者、ジョー・パワーは寝床につくと悪夢にうなされた。
彼は夢にリンジーが現れ「自分は殺された」と告げたという・・・。
「死者からの夢のお告げ」など本当にあるのか!?事件は思わぬ展開をみせる!

問題はジョーの透視です。番組サイトで「ある雑誌記者」というのは、おそらく『ザ・ピープル』紙のサイモン・レノンだと思います。前出の「キミハ・ブレイク」でもレノンが登場し、三つのキーワード「バトレイ」「マイケル」「ポール」についての話が紹介されていました。

「マイケル」と「ポール」は犯人の名前で、「バトレイ」というのは地名だといいます。そこで警察は、この地名を手がかりに犯人の自宅を割り出し、シャノンを無事保護。さらに犯人はシャノンの叔父で、名前はマイケル。友人たちからはポールというニックネームで呼ばれていたといいます。

つまり透視は全部当たっていたという話です。しかし、これらはジョーやその支持者が語っているストーリーに過ぎません。実際はどうだったのでしょうか。

まず、『ザ・ピープル』紙の元々の記事はアーカイブで確認ができます。これは2008年3月9日の記事で、犯人が逮捕される2008年3月14日の前に書かれたものです。

ここには「マイケル」と「ポール」という名前は出てきません。実はこの名前を透視していたという話が出てきたのは、犯人逮捕後の3月16日です。ですから簡単には信用できませんし、そもそもマイケルもポールもきわめて普通のありふれた名前であるという点は注意しておきたいところです。

次に「バトレイ」という地名ですが、この場所で犯人が逮捕されたと聞くと、何やらすごいことのように思えるでしょう。ところが実際は、全然大した話ではないんです。

9日の記事を確認しますと、ジョーがもともと述べていたのは、「オセット(Ossett)とバトレイ(Batley)という地域が見える。シャノンはそこで連れて行かれた」というものです。

ここで登場する「オセット」と「バトレイ」というのは、シャノンの自宅があるデューズバリーの隣町です。この二つの町は徒歩圏内であり、かつ生活圏内ですから、シャノンが誘拐された場所として想定するのは自然です。

大事なのは、シャノンの居場所を透視したわけではないという点です。もちろん警察が、もともと捜査対象の「オセット」と「バトレイ」という隣町の名前を今さら聞いて、捜査に進展が見られるなんてことは当然ありません。

警察はジョーとはまったく無関係に捜査して、シャノンの居場所を突き止めました。ジョーのおかげで事件が解決したと騒いでいるのは、一部のタブロイド紙だけです。

なお、この事件はその後、重大な進展がありました。驚くべきことに、主犯はシャノンの母親だったことが明らかになったのです。懸賞金目当てに、最初に捕まったマイケル・ドノバンと共謀していたといいます。

「懸賞金目的で実の娘を誘拐、母親と共犯者に有罪判決 英国」
http://www.afpbb.com/articles/-/2546061?pid=3585230

ジョーは母親が犯人だったとは、まったく透視できていませんでした。のんきに一緒に写真なんて撮っている場合ではなかったんです。

さて、長くなってしまったため、もうひとつのリンジー事件の方は少しだけ。この事件を解決に導いたのは、ロンドン警視庁のスローン警視で、ジョーではありません。スローン警視本人が、ジョーの主張を否定しています。

この他の点につきましては、後日、私の個人サイトの方で、ジョー・パワーの調査記事をまとめますので、その際に扱いたいと思います。しばらくお待ちください。

ジョー・パワーの検証”へ5件のコメント

  1. YM より:

    予想どおりの内容でしたね(苦笑)
    検証も討論もお粗末な限りでガッカリでした。
    ジョー・パワーの調査記事期待しております。

  2. 本城 より:

    視聴しました。母カレンが電話したときの音声などは、けっこう貴重でした。それ以外はとりわけ新しい情報はありませんでしたが、おさらいはできたと思います。
    今回、視聴率が悪くなければ、また別の超能力者を呼んでシリーズ化するかもしれません。そのときは、ぜひ日本の事件を扱ってほしいと思います。

  3. いっちゃん より:

    番組をみましたが・・・。
    超能力者が今そう主張しているだけで、事件解決前にどんな主張していたかは分からないわけで結局当てていたのかは不明ですね。
    >『ザ・ピープル』紙の元々の記事はアーカイブで確認ができます。
    こういうのがあるとはっきりするのですが。
    ところでアメリカ歯科医殺人事件ですが、「爪の中のDNAを州警察が隠蔽するかもしれないため、地元警察で保管していた」のに物的証拠がなくて困っていて「超能力姉妹が鑑定を申請して見つかった」ってどういうこと?
    あと超能力と関係ないですが、その取材で事件現場の家で「家財道具の一部をそのまま使っている」とありましたが、アメリカではそういうの気にしないんですかね?
    日本だと事故物件でリホームして家財道具は一新されそうですが。

  4. 本城 より:

    >いっちゃんさん
    DNAの件は、確かに首をかしげました。州警察に容疑者がいることを考えて送らなかったくらいですから、それが重要な証拠になることはわかっていたと思いますけどね。
    家財道具の一部をそのまま使っているのも驚きましたが、イギリスでは事故物件は人気だと聞きます。アメリカでも気にしない人はいるのかもしれません。

  5. 本城 より:

    ジョー・パワーの記事を書きました。
    http://www.nazotoki.com/joepower.html

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