書評『オカルト・クロニクル』

本城です。
松閣オルタさんの新刊『オカルト・クロニクル』(洋泉社)をご恵贈いただきました。今回はその書評です。

オカルト事件や未解決事件などがお好きな方なら、すでに「オカルト・クロニクル」というウェブサイトの方をご存知の方も多いかもしれません。管理人の松閣オルタさんの軽妙な語り口と、ディープな考察が魅力の人気サイトです。

今回の新刊は、そのサイトの書籍化だそうです。書籍化ですから、サイトに掲載されている内容と同じところも多くあります。とはいえ新情報があれば加筆されていますし、少し長めのまえがき、それにあとがき、新記事(「赤城神社『主婦失踪』事件」)も1本収録されています。

ひとつひとつの記事はとても長いです。長文大好き、がっつりした内容の記事が読みたいという方には向いています。一方で、長文が苦手だったり、コンビニ本などでよくあったりする1項目が1、2ページに要約されているライトな本が読みたいという方には向いていないと思います。

もうそろそろまとめかな?と思ったところから、さらに10ページ考察が続いたりしますからね。適当に流し読みするようなタイプの本ではありません。

ちなみに、本書で新記事となっている「赤城神社『主婦失踪』事件」は35ページのボリュームがあります。ですが無駄に長いのか、というとそんなことはなく、実際に事件現場へ出向いて、残された映像や証言の妥当性を詳しく検証されています(写真やイラストも付けて)。

これが抜群に面白く、本書の中でも白眉でしょう。

ついでにひとつ。本書を読んでいて思ったのは、その独特の語り口を「本」として手に持って読んでいることに新鮮さを感じたということでした。なかなかないんです。

私が少し思い出したのは軽妙さとディープさを併せ持つ『サイキック・ツーリスト』という本ですが、これもやはり著者が異なれば違いはあります。ですから、少なくともオカルトを扱った本としては珍しいこの語り口を、本として読めるのは新鮮でした。

あと、書籍化すれば図書館にも収蔵されますから、将来、新刊で手に入らなくなっても長く残りますね(松閣さんが不慮の事故などで早死にしてサイトが消えても……)。

本書でも書かれていますが、いつか誰かが、記事に触発され、自分でも調べてみようとアクションを起こすかもしれません。ウェブ以外にも接点ができるということはいいことだと思います。

最後に。本書では本文以外にも、あとがきやプロフィールでも、クスッと笑えることが書かれていました。プロフィールにああいうことを書く人って、なかなかいないんじゃないでしょうか。一瞬、検索しそうになりましたけど、すぐわかりました。

興味のある方は、ぜひご自分で確かめてみてください。面白いです。

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